★スロットルバルブのしくみ★

ここではスロットルバルブのしくみについて解説しています。
ビッグスロットル等に交換するにあたって
基本原理を理解しておくための参考にしてください。

 

そもそもスロットルバルブって何ぞや?

スロットルとは日本語に訳すと「流体制御」という意味だそうです。
ただこれは機械工学上の訳だそうで
直訳すると「
首を絞めて窒息させる!」だそうです。(笑)
(ウィキペディアより・・・)

つまりエンジンの首を絞めて窒息させる装置ってことですね!
冗談のような話しですが、ある意味当たっています。
スロットルバルブが無いとエンジンは常に全開に回ってしまいます。
そこで吸気口にフタをして回転を制御しているんです。

オーディオのボリュームも同じような仕事をしています。
ボリュームが無ければアンプの最大出力で
大音量で再生してしまいます。
電気抵抗のボリュームを入れることでアンプの出力を
絞って調整しているんです。

つまりスロットルはエンジンのボリュームってことですね。
吸入される空気の量をスロットルで調整することで
エンジンの回転数を制御しているんです。
でもボリュームが電気抵抗であるのと同じく
スロットルも吸気経路にある抵抗であるのは間違いありません。
 

 

スロットルバルブの種類は?

一口にスロットルバルブといってもいろんな種類があります。
構造」の違いと「制御」の違いに分けて説明します。

まず構造の違いには・・・
単口式」・「多口式」・「多連式」などがあります。
*わかりやすいように私が勝手に付けた名前ですので
ヨソに行って言わないようにネ!

*単口式スロットル

現在いちばん一般的な方式の物です。
スロットルバルブが一つだけのごく普通の物ですね。
今街中を走ってるクルマの多くがこの方式だと思われます。

 

これはカローラのスロットルボディーです。
中央に見えるスロットルバルブ一つで
低回転から高回転までの全てをコントロールしています。

エンジンによっては別経路を設けて
アイドリングコントロールをしている物もあります。
ただ、これらはアイドリング領域だけで作動する物ですので
スロットルバルブとは見なしません。

 

*多口式スロットル

これは一つのスロットルボディーの中に
複数のスロットルバルブを組み込んだ方式です。
「2バレル」・「4バレル」といった呼び方で、
キャブレターの時代には一般的な物でしたね。

キャブレターはインジェクションと違って
スロットルバルブを開けることによって発生する
エンジンの負圧によってガソリンが吸いだされるという方式なので
一つのバルブだけだと制御が難しかったんですよね。

口径を大きくすると細かい制御ができないし、
反対に小さいと高回転で追いつかないし・・・
そこで小さくて細かい制御ができる物を複数組み合わせて
高回転にも対応できるようにしてあったんです。

 

これはアメ車とかの大排気量のエンジンに使われる
「4バレル」のシングルキャブレターです。
1つのボディーに4つのスロットル回路が組み込まれています。

大排気量とはいえ、アイドリング時や低速域では
さほど大量のガソリンはいりませんので
小さなスロットルで細かい制御をする必要になるんですよね。
そして高回転では4つのスロットルがフル稼働って事です。

 

インジェクション車でも多口式は存在します。
これはRX−7のスロットルボディーですが
一つのボディーのなかに3つのバルブを持った「3バレル」タイプです。
ロータリー+ターボなので、制御が難しかったんでしょうかね。
排ガスも厳しいクルマですから・・・

 

*多連式スロットル

これはハチロクとかでおなじみの「4連スロットル」などの
各気筒独立のスロットルバルブを持った方式です。
キャブレターの時代からSOLEX・WEBERといった物があり、
高出力のエンジンには欠かせないアイテムでした。

近年でもGT-RのRB26エンジンや
5バルブの4AGなどに採用されました。
(もちろんインジェクションですがね・・・)
最近はエコの関係でスポーツエンジンが少なくなったので
見なくなりましたが、バイクではまだまだ現役です。

アフターパーツの世界ではハチロクを筆頭に、
吸気系の最終兵器として君臨してますね。
なんと言っても見た目がカッコイイし、
独特の吸気音にもシビレます。
(ノーマルカムだとショボイ音ですが・・・)

 

これは戸田レーシング製のNSX用スロットルです。
6気筒なのでスロットルも当然ながら6個です。
V6エンジンですので左右のバンクの間にスロットルが
集まりますのでよけいにカッコイイ!
V12だとこれが6個づつ並ぶわけですね。

 

構造の違いにはこのほかにバルブ自体の違いもあります。
ごく一般的に使われている「バタフライバルブ」
一部の車輌に使われている「ゲートバルブ」
といったような方式がありますが、
現在ではほとんどがバタフライバルブですね。

 

 

 

続いて制御の違いには・・・
ワイヤー式」 と「電子式」があります。
*こんどはヨソで言ってもOKよ!

 

*ワイヤー式

アクセルペダルとスロットルボディーをワイヤーで繋いでます。
キャブレターの時代から普通に採用された方式です。
(キャブの頃にはリンク式ってのもありましたが。)
最近では段々姿を消してきています。

 

アクセルとスロットルが機械的に繋がっているので
ドライバーの意思が忠実に伝わりますね。

 

*電子式

ワイヤーを無くしたフライバイワイヤー(FBW)方式です。
アクセルペダルにセンサーが組み込まれていて
ドライバーの踏み具合を電気信号に変換します。
その信号がCPUに送られてスロットルをモーター等で開閉します。

 

矢印の部分にモーターが入っていてスロットルを開閉します。
そのモーターをCPUから送られた信号でコントロールするんです。
CPUから繋がっているカプラーが右側に見えますね。

省燃費のために最近のクルマのほとんどはこの方式です。
ただ、制御にCPUが絡んでくるので
ドライバーの意思どおりに反応してくれません。
CPUが勝手にエコなアクセルコントロールをしちゃうんですよね。

そのためドライバーのアクセル操作に対して
エンジンがリニアに反応してくれないんです。
これってあまり気持ちのイイもんじゃありませんよね。
出始めの頃に比べればだいぶマシにはなってきているんですが・・・

最近はスポーティーな走りを楽しめるように
アクセルからの信号をコントロールできる装置も発売されています。

 

こういったように細かい部分ではイロイロと進化していますが
基本的な原理は昔とあまり変わっていないんですよね。
エコの方向に進んでいる近年の自動車技術においては
大きな吸気抵抗となるスロットルバルブは
邪魔者以外の何者でもない存在になってきました。

そこで最近スロットルバルブの付いていないエンジンが
開発されてきているんです!
(ディーゼルは元々スロットルはありませんが、話しが長くなるので・・・)
BMWの「
バルブトロニック」やトヨタの「バルブマチック」です。
これらのエンジンはすでに市販車に搭載されています。

 

スロットルが無くってどうやって制御するのかって言うと
吸気バルブのリフト量を電子的にコントロールするんです。
これにより抵抗となっていたスロットルが無くなり
吸入効率が上がり、高出力や低燃費に貢献ってことですね。

写真を見ただけでは構造はさっぱりわかりません。
一般の方ならなおさらでしょうね・・・
比較的わかりやすい動画を見つけました。

 

つねにグルグル回っているのが普通のカムです。
そのカムが黄色の
ロッカーアームを押してバルブを開きます。
そして
緑色のカムがこの機構のポイントです。
このカムが回ることでロッカーアームの動き幅を
変えているんですよねえ。

ロッカーアーム自体は現在のエンジンでも使われています。
(形状は異なりますが・・・)
ただ、その働きは「バルブをより大きく開く」ためだったり
「V−TECの作動を切り替える」ための物なんです。
考え方としてはV−TECに近いものではあるんですがね。

V−TECはカム自体に作用角の違う2種類の山があって
それを切り替えていたにすぎません。
この機構ではあるポイントで「ロー」・「ハイ」を切り替えるのではなく
アイドリングから高回転までの領域でバリアブルに
コントロールしているんです。

緑色のカム の回転をCPUでコントロールすることによって
バルブの開き具合を自由に調整できるんです。
たしかにバルブが少ししか開かなければ
空気がシリンダーに入らないので回転数は上がりませんよね。

反対に大きく開くようにすれば回転が上がります。
わかってしまえば単純な理屈なんですが
それを実現しているってとこに技術の進歩を感じます。

今のところハイパワーエンジンには対応していないようですが・・・
どうしても高回転志向になってしまうので
余分な機構の部分が追従してこないんだとは思いますが、
おそらくそういった点も時間の問題でしょうね。
こうなるとハイカムなんかは、もう過去の遺物?!