NSX C30A ハイコンプ チューニング作業の紹介です。

★C30A ハイコンプチューン★ 
分解編



S社長のNSXもそれなりの走行距離に
なってきたので、そろそろオーバーホールを
と言う話が出てきました。
「どうせエンジンあけるなら、パワーアップ
したいねえ。」ということになりました。
あれこれ検討した結果JUNのピストンを
使ったハイコンプ仕様に決定!
ブロックごと換えて3.2Lにする案も
でたのですが、S社長の希望が
「NAらしくレスポンスのいいエンジン」
と言うことなので排気量アップは見送りです。

ピストンを換えて圧縮を上げてやったうえで、
フリクションロスをできる限りなくす方向でいきました。
そうすればカムがノーマルのままでも
中速域からパンチのあるエンジンに
なるだろうとの予測です。
カムを換えれば高回転でパワーは
出るものの、中低速ではトルクが少なくなります。
高回転を多用しないと走れないから
エンジンの寿命も短くなるだろうし、
あえてノーマルカムで行くことに。
じつは高回転仕様だと、ドライバーの性格に
不安があったりもしたので・・・
(熱くなるとついつい踏みすぎてしまうもんで)

ピストンやら純正部品やらがひととおり揃った
ところで作業開始です。
まずはエンジンを降ろさないと・・・





今回はエンジン・ミッション一体で
サブフレームごと降ろしました。
しかし、これはまことに重かった!!
先にサブフレームだけ降ろしておいたほうが
絶対ラクだったろうと後で思いました。





なにしろサブフレームには足廻りや
ブレーキも付いているので、これだけでも
けっこうな重量になります。





ミッションを分離してエンジンをスタンドに
固定して、バラシ作業の開始です。





ちょっと前から排気漏れの音がしていたの
ですが、ものの見事にタコ足が割れてました。
今回タコ足は新品にするので問題無しですけど。





続いてクラッチの状態のチェックです。
この車はディスクをメタルに換えてあったので、
カバーの圧着面はけっこう荒れています。
まあ街乗りなしのサーキット仕様ですから、
こんなもんなのでしょうけどね。





ディスクのほうは磨耗の限界付近まで
きてましたねえ。
もう少し使っていたら滑っていたかも。





フライホイールはクロモリの軽量品に
換えてあったのですが、こちらのほうも
圧着面はけっこう焼けています。





さあここからがいよいよエンジン本体の
バラシ作業です。





まずはサージタンク・インマニ等を外します。





サージタンクの下になっているブロックの
部分に枯葉などのゴミが溜まってました。
日頃見えない部分ですし、手も入らない
からこんなもんですかねえ。





NSXのタペットカバーがマグネシウムなのは
けっこう知られていることなんですが、
なんとサージタンクの底の部分もマグでした。





誇らしげに「MAGNESIUM」の刻印が
打ってありました。(見えないとこだけど・・・)
でも、なんでこんなとこにマグが必要なんだろう?
車の値段が高くなるだけで、あまり軽量化とか
には効果なさそうなんですけどね。





タペットカバーを開けてカムを外します。
NSXのカムキャップは縦・横方向で繋がってます。
かなり強度に気を使っているようですね。





次にロッカーアームを外します。
アームの根元をシャフトが通っているので、
このシャフトを抜けばアームが外れてきます。
この時アームがバラバラにならないよう
1組づつ輪ゴムでくくっておきます。
もちろん位置もちゃんとわかるように
して保管しておきます。
なにしろ組付けの時まで出番は無いですから。





とりはずしたウォーターポンプです。
ベアリング等のガタ等は出ていなかったの
ですが、なんと羽根の部分がサビてました。
今回はウォポンも新品交換です。





ヘッドが降りたら次は腰下です。
まずはピストンとシリンダーのチェック。





このエンジンはけっこうカブリ気味だったので
「さぞや」と思いきや、以外とカーボンも少なく
シリンダーの壁面もわりとキレイでした。





クランクシャフト・ピストン一式です。
噂のチタンコンロッドと初対面です。
量産車のエンジンにチタンを使うなんて
ホンダさんならではですよね。
ちなみにこのコンロッドはピストンと
セットでしか部品としての設定が無く、
1本5万円ぐらいします。
つまりピストンとコンロッド1台分で
30万円ちかくなるっちゅうことですね。





ピストンはサイド部分がかなり黒くなっています。
新品を見たことないのでわかりませんが、
元々のコーティングの色かもしれません。
熱による焼けなのか、オイル交換をさぼって
いたのかもしれませんけど・・・





これはコンロッドメタル、通称「子メタル」です。
サーキットをガンガン走っていたわりにはキレイかな?
4AGとかだと「子メタル」はけっこう傷んでいる
車が多いんですけどね。





こちらはクランクメタル、「親メタル」です。
オイル溝は上下のメタル両方に切ってあり、
オイル穴も1枚に3箇所も開いています。
またまた4AGとの比較ですが、4AGだと
オイル溝はブロック側の1枚だけで、穴も
ブロック側の物に1箇所だけです。
オイルの潤滑にかなり気を使っています。





それもそのはず、これだけ気を使っていても
「親メタル」はかなりキズがありました。
やはりコンパクトに作られたV6だけに、
「親メタル」はけっこう厳しいようです。
6気筒なのにクランクジャーナルは
4ヶ所しかありません。
4気筒の4AGが5ヶ所なんですから、
メタルにかかる負担は相当なものでしょうね。
4AGだと親メタルは再使用できるぐらい
キレイなエンジンが多いですから。





全部バラした状態のブロックです。
親メタルがのっかる4ヶ所にはブロック側にも
オイル溝が切ってありました。
ピストンが0.5ミリのオーバーサイズのため、
ブロックはこの後ボーリングに出します。





さあ、お次はヘッドです。
V6だから当然ヘッドは2個あります。





燃焼室のカーボンもそれほどでは無いようです。
バルブを外していよいよ加工に入ります。