NSX ATから5MTへの換装作業の紹介です。

★AT→5MT換装★


NSXっていうクルマは販売台数の大半を
初期型が占めているんです。

発売になった時期はあのバブル時代でしたので

高価なクルマだったにもかかわらず
かなりの台数が売れたんですよね。

ただ、そういった時代だったため、
「走りのクルマ」というよりは「かっこいいスポーツカー」
といった受け止め方だったもんですから

お金持ちのセカンドカーとしての購入が多かったようなんです。

そうなると当然のようにAT車の比率が高くなります。
さらに近年では本来のスポーツカーとしての評価が高まったので
MT車が人気になり価格が高騰しているんです。
 しかし実際に市場に出回っているMT車には程度の悪い物が多く
販売価格に見合っていないのが現状なんですよね。

反対にAT車のほうは荒い使い方をされておらず、
程度の良い個体が多いんです。
お買物車として使っていたら当然ですよね。
ATのNSXでサーキット攻める人も少ないでしょうから・・・
さらにタマ数も多いですから選択肢も広がります。

なのでMT車に比べると安価に流通しているんです。
(とは言え年式からするとべらぼうなプライスですけどね。)

NSXっていうクルマの本質を楽しむならやはりMT車になります。
でも、程度が悪くて値段が高い!

そこで程度が良く安価なAT車を買って
MTに載せ換えるっていう方法が増えてきているんです。





 

今回のオーナーさんは転勤で岡山に来られたそうです。
今までは都会に住んでいたので渋滞とかを考えるとATのほうが良かったんだけど、
岡山の交通事情ならMTのほうが楽しいと思ったみたいですね。







 

MT本体はオーナーさんが中古を持って来られました。
状態が全く不明のためあらかじめバラして
オーバーホールをしてやります。
せっかく載せ換えてもすぐにトラブルが出たんじゃあね。

最近5MTへの載せ換えが増えてきた要因のひとつに、
中古品が多く流通しはじめたって事情があるんです。
NSXは後期型になってMTが5速から6速に変更されました。
そこで前期型のオーナーさんたちが6MTに載せ換えるようになったんです。
で、外した5MTが中古で出回るってパターンです。

5MTに比べて6MTのほうがクロスレシオになっていますので、
サーキットを走る方なんかには向いています。
ストリートオンリーの方でもワインディングから
高速クルージングまで気持ちよく走れるんですよね。
なので6MT人気が上昇するのは当然なのかも。

おかげでこうして安価にATから5MTに載せ換えることが可能になったんです。
以前なら5MTでも中古品の流通はほとんど皆無でしたから・・・







 

 まずはMTをバラします。
今回ベアリングとシンクロリングは有無を言わせず交換します。
なにしろどちらも消耗品ですからね。







 

インプットシャフトのギアを全て外してチェックします。
ギア本体はもちろんのこと
ハブスリーブ等に欠けやバリが出てないか確認します。
このあたりもシフトフィーリングに影響する部分ですからね。







 

こちらはカウンターシャフト側。
当然ながら全バラでチェックします。







 

交換する新品部品です。
NSXってクルマ自体の高価なイメージのわりに
MT内部の部品は比較的安いんですよね。
それでも年々値上げされて昔に比べると高くなっていますが・・・







 

ギアやハブスリーブ等に大きな問題はありませんでした。
そのため当初予定していた最低限の部品交換で収まりました。







 

MTオーバーホール完成です!
あとは載せ換えを待つばかり・・・







 

今回交換された部品たち・・・
おつとめ御苦労さまでした!







 

ATからMTへの載せ換えって本体換えてOKってわけじゃありません。
室内からエンジンルームから油圧配管等などかなりの部品が必要です。
写真はパーツリストをプリントアウトした物なんですが
これを元にATとMTで異なってる部品や必要な部品をリストアップ!
全部で100点以上の部品点数になりました。
この作業をやってると頭がおかしく・・・(笑

それでもボディーやシャーシ廻りの大物は共通なので助かります。
クルマによってはボディーの大幅加工とかが必要な場合もありますんで。







 

そんな中で大物の部類に入るのがドライブシャフト!
2本のうちの片側が微妙に長さが違うんです。
今回はシャフトASSYで新品にしました。







 

ハーフシャフトも新品です。
上側がMT用ですが太さが違うのがわかりますか?
シャフトをエンジンに固定するブラケットも交換しないといけません。







 

さあ、AT本体をクルマから降ろします
ATって構造上中身が詰まっているんでけっこう重いです。
トルクコンバーター部分にオイルもたっぷり入っていますしね。







 

外したドラシャのブーツ部分はご覧のとおり。
ブーツは破れてはいないんですが締付け部分からグリスが滲んでいます。
これはNSXの持病のひとつなんです。
初期モデルのクルマはほとんどがこうなっていますね。
で、エンジンやボディー下部にグリスが飛び散っています。







 

片側のシャフトは再使用しますので、ブーツを新品に交換しました。
これで当分は大丈夫でしょう!







 

クラッチは純正品を使用します。
オーナーさんはサーキット走行などのハードな走りはしないそうなので
メタルやカーボンなどの社外品クラッチは必要ありません。
街中では純正品のほうが扱い易いですからね。







 

NSXは純正クラッチがツインプレートなんですよね。
そのためディスクの位置出しには気を使わないといけません。
ここがズレているとMTを載せる時に苦労させられます。
ウチでは位置出し用の専用工具を使ってるんで問題ありませんけどね。







 

無事にMTが載りました!
MTマウントとかも異なるので新品に交換です。







 

続いて室内の作業です。
シフトノブを換えてあるんで一瞬MTに見えますが、正真正銘ATです。







 

まずはブレーキペダル。
AT用の幅広タイプからスリムなペダルに交換です。







 

続いてはクラッチペダル。
ATには付いていませんから、新設になりますね。







 

両ペダルが付いた状態です。
この作業をするためにはステアリングコラムを外さないといけないんで、
けっこう大がかりな作業になりますね。







 

クラッチのマスターシリンダーも新設です。
油圧の配管は純正品ではありません。
純正の配管はかなり奥まった所を通っているために作業が大変なんです。
そうなると工賃が高くなっちゃいますからね。

今回はステンメッシュのホースを使って配管しました。
部品代と工賃のバランスを考えるとこちらのほうが安くあがります。







 

ATのセレクターレバーを外します。
この後、配線に若干の加工が必要になってきます。







 

MTのシフトレバー関係の部品です。
ブラケット等の大物の他にかなりの数の小物部品が必要なんです。
ビニール袋の中にぎっしりと詰まっている部品たちは
全部このシフトレバー関係の部品なんですよ!
これを1個1個組付けにゃあならんのです・・・







 

組上がったシフトレバーです。
この状態で見るとどこにそんだけの部品が使われてるの?
ってカンジに見えちゃいますが・・・







 

新品のシフトワイヤーです
AT用の物は当然ながら使えませんので・・・
このへんの部品をケチって中古を使うとあとで痛い目に会います。(笑
中古が流通してるかどうかは知りませんが。







 

シフトレバーが車輛に付きました
ようやく形になってきましたね〜。
この後、内装のパネルやステアリングコラムを戻していきます。







 

シフトノブも付いて車内の作業も終了です。
本当はメーターも違うんですけど今回は交換しませんでした。
AT用のシフトインジケーターの有る無しだけなんで、
実用上では交換しなくても問題ありませんからね。







 

CPUもATとMTでは違うんですが今回は交換していません。
どこに違いがあるのかと言いますと、
MTのほうがHi側のカムが高回転型の仕様になっているんですよね。
CPUも当然ながらこれに合わせたセッティングになっており
AT用ではレッドゾーンも低く設定されています。
ただしLo側カムは同じプロフィールなので街乗りではほとんど問題無いでしょうね。

で、ATのCPUには特別な制御が入っているんです。
ニュートラルの信号がONになると
レブリミットがレッドゾーン手前で掛るようになっているんです。
おそらく空吹かしでのAT保護の目的あたりだとは思いますが・・・

だったら常にOFFにしとけばイイんじゃない?って思うとこですが、
信号がOFFの状態だとアイドリングとかに影響がでちゃうんですよね〜。
エンストすることは無いみたいですけど、
回転落ちが遅かったり、暖機中の回転が高かったり。
そのかわりレッドゾーンまでキッチリ回る。

そこでスイッチを付けてON/OFFを手動で操作できるようにしました。
通常時はONにしておけばアイドリングとかに問題が出ませんし、
レブリミットが少し早いぐらいは気になりませんよね。
高速とかでブっ飛ばす時にはOFFにする。
そういった時ってアイドリングの制御なんかは関係ありませんもんね。







 

各部を再度チェックして完成です。
マニュアル操作の楽しいNSXに変身しました。

 

当店では中古品を持ち込んでの作業でも大歓迎です
ただし中古品は物の状態が千差万別ですので、
今回のように事前にオーバーホール等で対処することをオススメします。
そこをケチって後でトラブルが出るのはサミシ〜〜ですからね。


MT本体が中古品で安く買えたとしても、
その他の純正部品が大量に必要ですから今回のように新品を使うと
それなりのコストは掛かってしまいます。
大物部品だけでも中古を使うという手もありますが、
ポイントとなる部分は新品を使ったほうがいいでしょうね。

現在AT車に乗っている方にとっては問題無いと思いますが、
これからAT車を買って・・・と思っている方は
車輛の価格差との検討をしっかりとやってくださいね。