ビートをレトロフィットで134aガス対応エアコンに修理した作業の紹介です。

★ビート レトロフィット エアコン修理★





ビートはエアコンが弱いらしく、けっこうトラブルが多いようなんです。
高回転型のエンジンですのでエアコン掛けたままブン回すと
コンプレッサーにかなりの負担が掛るようで、ビートオーナーの間では
「5000回転以上回す時はエアコンを切る!」っていうのが常識みたいです。

他にもマグネットクラッチ等の電気的トラブルも多いようです。
コンデンサーの取付け位置がナナメになってるのも冷却効率が悪そうだし、
そもそもサイズが小さいんで容量不足かもしれませんね。

そんなビートのエアコン修理作業です。






年式はそこそこ古いんですが、キレイな状態を維持してますね〜。
スポーツカーらしいイエローですね。
ボディーも黄色、ホイールも黄色、オマケにプレートも黄色!(笑

このボンネットの開き方もスポーツカーの雰囲気があってイイですね〜。
今や前ヒンジのボンネットは国産車では絶滅してますもんね。


少し前にはエアコンは効いていたような気がしていたのに、
先日から暑くなりはじめたんで本格的に使おうとしたら全く効かないそうなんです。
エアコンのスイッチすら入らない状態のようです。
いくらオープンカーとはいえエアコンが効かないと夏はキビシイっすよね〜。
っていうかエアコンの必要性はオープンのほうが高いのかな?

で、この頃のクルマのエアコンは R12ガス なんです。
昔はエアコンの冷媒として主流だったガスなんですが、
オゾン層を破壊するってことから製造中止になっちゃったんですよね。
今でも売ってるとこはあるみたいなんですが、
1本数千円とかのべらぼうなプライスが・・・
ちょっと気軽に使える値段じゃないですよね〜。

R12対応の代替ガスっていうのもあるんですが、コレがクセモノでして・・・
当店でも今まで何度か使ったことがありますが、あまり良い印象は無いんですよね。
中には使ってすぐにコンプレッサーが焼きついちゃったことも・・・


そこで今回は レトロフィット を使って 134aガス が使えるようにしました!
このガスなら現在使われている物なんでどこでも手に入りますし、
お値段も1本千円ぐらいとリーズナブルですから、気軽に使えますからね。

レトロフィットって方法はけっこう以前からあったんですが、
当初はトラブルも多かったみたいであまり評判が良くなかったようなんです。
旧タイプのOリングを使うと溶けてしまうといったような都市伝説もあったりして・・・
最近ではいろいろ事例も増えてきてトラブルの原因もわかってきているんですよね。

トラブルの原因の多くは中途半端な修理だったようなんです。
注入口の変換バルブと専用オイルのセット品なども売られているようですが、
こういった簡易レトロフィットだととりあえず効くようになったとしても、
すぐにトラブルが出ちゃって再修理ってことになるようです。

これは現在傷んでいる部分を修理することなくガスを入れ替えるという
中途半端な修理に原因があるのであって、ガスのせいでは無いんですよね〜。
ちゃんと部品交換をしたうえで使えば134aガスでもOKなんです。
実際に当店で2年ほど前にレトロフィット修理をしたAE86は、
今でもちゃ〜んとエアコンは効いてますからね。







このクルマの場合にはガスは全く入っていませんでした。
そりゃあエアコンも効きませんよね!(笑

各部を点検したところココが一番怪しそうです!!
コンデンサーと高圧ホースのジョイント部分なんですが、けっこう汚れてます。
しっとりと湿っているようなんでオイル分が付着しているんでしょう。







外してみたらOリングが切れていました。
Oリングが切れちゃったらガスが抜けてしまうのは当たり前ですね。
コンデンサー側には残骸が付着していますね。

ここはジョイントを緩めても固着していて中々外れませんでした。
なので外した衝撃で切れちゃったのかもしれませんが、まともな状態でなかったことは確かです。
ただこの残骸がシールパッキンのようにも思えましたので、
過去に漏れを止めるのにシールパッキンを使ったのかもしれませんね。
どちらにしろOリングは新品に交換します。







ここもソコソコ怪しいですね。
ただ新車から一度も触ってなかったとしたらこれぐらいの汚れは当然かも?







今回はジョイント部のOリングは全て新品にします。
このへんを中途半端にやっちゃうと後々のトラブルの原因になるんですよね〜。
もちろん134aに対応した材質の物を使いますよ!
溶けるっていうのはオーバーかもしれませんが、トラブルの元は排除しないとね!!







レシーバータンクも新品に交換します。
この部品はレトロフィットじゃなくても交換することの多い物なんです。
特にガスが抜けてしまっている場合には必ず交換しないといけません。

コレってエアコン配管内のフィルターのような物なんです。
ガスの内部に混ざったゴミや汚れ・水分等を除去する働きがあるんです。
ガスが抜けちゃってるってことは配管内に空気が入ってるってことですから、
大気中の湿気が大量に混入しちゃってるわけなんです。
なので新品に交換しておかないとトラブルの元になっちゃうんです。







ホースも交換します。
この他にもパイプが数本あるんですが、そちらはほとんど再使用します。
パイプは金属製なんで少々OKですけれど、ホースはゴムですからね〜。
チェックしたところ現状は問題なさそうでしたが・・・

写真の中央2本が新品で、両脇の2本が取り外した物です。
ビートにはホースが4本使われているんですが、2本はすでに廃版になってました。
見積り段階の問い合わせでは在庫があるように聞いてたんですが、
実際に発注をかけたら廃版になってたんですよね〜。
これぐらいの年式のクルマになるとこういったケースはよくあるんですよね。







これはブロアファンのユニットです。
今回ここでは交換するパーツは無いのですが・・・

ケース等に貼られているスポンジがボロボロになっていました。
隙間を塞ぐためのスポンジがボロボロだと意味ないんで貼り直します。







内気・外気を切り替える部分のフタのスポンジも・・・
手で触ると粉になって崩れました。(笑







ブロアファンとケースは洗浄しておきました。
この頃のクルマにはエアコンフィルターが付いていませんので、
かなりホコリが溜まっていたんですよね。







スポンジを貼り替えて組み付け完了です。







このステーのスポンジもボロボロでした。
ブロアユニット〜エバポレーター〜ヒーターユニットの間の隙間を塞ぐ物なんです。
スポンジを貼り替えましたんで、これでエア漏れ無しですね!







これはエバポレーターのユニットです。
今回はここにも交換部品が盛りだくさんでして・・・







エバポレーター本体を交換します。
ガスが変わるからといってエバポは直接問題無いんですが、
どうやらビートのエバポはけっこう弱いらしくトラブルが出やすいらしいんです。
そのため万全を期して交換することにしました。

年式からいって相当汚れているかと思ったのですが、
(なんせエアコンフィルターが無いクルマですから。)
さほど汚れていないんで過去に交換してあるのかもしれませんね。

外したほうに付いているUFOみたいな形の部品がわかりますかね?
これはエキスパンションバルブと言います。(通称エキパン)
ここはけっこうトラブルが多い部分なんです。

ガスの中に水分が混ざっていると、ここでその水分が凍っちゃうんですよね。
配管内部で凍ることになりますんで、配管を塞いじゃうんです。
そうなるとガスが廻らなくなってエアコンが効かない。
で、エアコンが効かなくなると温度が上がるんで氷が溶けてまた効きだす。
というのを繰り返すようになるんです。

他にも単純にゴミが詰まって効かなくなるっていう場合もあります。
昔私が乗ってたカリブ号でもここが詰まって効かなくなったことがありましたね〜。
ガス抜け以外でエアコンが効かなくなる原因としてけっこう多いんです。
なのでゴミや水分を除去するレシーバーが重要なんですけどね。







エバポレーターとエキパンを新品にして組み付けます。
新品のエバポなんで当分はニオイの心配も無くなりますかね?(笑







これは再使用する予定のパイプです。
でもそのまま使うわけじゃなく、ひと手間かける必要があるんです。
配管内部から垂れているオレンジ色の液体は古いオイルが残った物なんです。
オイルはガスに混ざってエアコンシステム全体に廻っちゃってるんですよね〜。
R12と134aでは対応するオイルの成分も違うんです。
そのため古いオイルが残っているとトラブルの元に・・・







再使用するホース・パイプやコンデンサーの配管内部を
専用の洗浄機と洗浄液でキレイに洗浄します。
古いオイルだけでなく、ゴミや汚れが残っているかもしれませんからね。
配管内部がキレイになればエキパンの詰まりも防止できます。







洗浄後の廃液は見事にオレンジ色ですね。
元々の洗浄液の色は無色透明ですので、これだけオイルが残っていたってことです。
洗浄後はエアブローして洗浄液が残らないようにします。
ただ少々洗浄液が残っても問題が起きないような成分にはなっているようです。







レシーバーや配管等をどんどん組み付けていきます。
洗浄などの作業は事前にまとめて終わらせておくのが肝心なんです。
エアコンは湿気がトラブルの元になるんで、組み付けは素早く一気にやっていきます。







ラストに登場するのがコンプレッサーです。
ビートは純正でレトロフィットコンプレッサーキットなる物があるんですよね。
本体と専用オイル・変換バルブ等がセットになったものです。
もちろんコンプレッサーのシール等も134a対応品になっています。

ビートはマグネットクラッチもトラブルが多いようなんです。
取り外した物もコンプレッサーに比べてマグネットクラッチは新しいように見えます。
過去にトラブルが出て交換したのかもしれませんね。
今回は本体もマグネットクラッチも新品になりますから安心です。







キットに含まれている専用オイルです。
コンプレッサーの交換が最後になったのはコイツのせいなんです。
と言いますのもこのオイルは吸湿性があるんですよね。
そのためオイルを注入後もフタをして外気を遮断しておきます。







取付けてホースを配管したらすぐに真空引きに取り掛ります。
そのためにコンプレッサー以外の作業を先に進めていたわけなんですよね〜。
でも他の配管部分も湿気は禁物なんで全体的に素早い組み付けが必要なんですけどね。
真空引きをすれば外気は完全に遮断できますから、オイルも心配無くなります。







これもキットに含まれているパーツのひとつです。
R12と134aはガスを注入する部分のバルブ形状が異なります。
おそらく誤って違うガスを入れることが無いように考えられたことなんでしょう。
そのためこの変換アダプターを使って134a用のバルブ形状に変えるんですよね。

ところがこの変換アダプターのひとつに不具合がありまして・・・
まさか新品の純正部品に不具合があるとは思わないんでちょっと悩んじゃいました。
いちおうウチで加工を施してなんとか不具合は解消できましたが、
しっかり頼んますよ!ホンダさん!!(笑







低圧・高圧ともに変換アダプターを装着すると見慣れた光景に・・・(笑
これで最近のクルマと同じになりましたね。







真空引きをしてリークチェックが終わったらいよいよガス注入です。
レトロフィットの場合にはR12の規定量よりもガスを少なめに入れる必要があります。
134aはR12よりもガス圧が高くなってしまう性質があるため、
量を少し減らして圧が上がりすぎないようにするんです。
それでも入れてる途中からエアコンは冷え冷えの風が出るようになりました。

入れ終わった頃にはバッチリと効くようになりましたよ!
ガス量が少ないので少々効きは悪くなると言われてますが、
全然問題ないぐらいに冷えてます。
これなら今年の夏も安心して過ごせるでしょうね。

この日は気温が低かったのでガス圧も全然問題ありませんでした。
おそらく気温が上がっても問題になることはないでしょうね。



古いクルマのネックのひとつにエアコンがあります。
レトロフィットで134aガスに変えるっていうのはこれからの主流になるかな?
なんせR12は生産中止だし、代替ガスはトラブルが多いし・・・
それに134aに変えておけば後々の修理時にも気軽に対処できますもんね。

ただし交換しておかなければいけないパーツがけっこうありますので、
それなりの予算は必要になってきますけどね。


古いクルマのエアコンでお悩みの方は一度ご相談くださいね!